No.18 マーティン先生はどう思われますか?

以前こちらのブログで紹介させていただきましたが、1998年当時、私が27歳の頃に某ビートルズのファンクラブの企画「マーティン先生はどう思われますか?」で質問し、回答いただいたことがありました。
なんと、古い本の中からその当時のQAのプリントが出てきました。

27歳当時の自分を褒めてあげたいと思います(笑)。

以下、原文ままに記載します。


(私の質問)
現在ではビートルズの正規盤での音源は基本的にCDのテイクに統一されていますが、以前は世界各国で様々なレコードが発売されていました。
その各国盤ではステレオ、モノラルにて微妙なテイク違いやミックス違いを1曲につき何種類もリリースしたのはなぜでしょうか?
また歌詞が間違えていたり、ノイズをそのままにしてリリースした意図についても教えてください。

(マーティンさんの回答)
ミックス違いは意図的だったとも言えるね。

というのも、ミキシングというのは、演奏と同様毎回それぞれ微妙に異なるものなんだ。
あるときはこのミックスが気に入って、別のときはあのミックスがいいと思ったりする。
少し変化をつけたほうが面白いという理由だけで、シングルとアルバムで別のミックスを収録したこともあった。

あとはもちろん、ステレオとモノラルの問題もあった。初期の頃は何よりモノが重要だった。当時はステレオの普及率がまだ低かったから、ステレオは重要視されていなかったんだ。
例えば、アルバムSGT. PEPPERSではモノ・ミックスに3週間を費やしている。しかも作業はビートルズのメンバー全員の立ち会いのもとに行われた。そしてそのあとに、私とジェフ・エメリックがスタジオに残ってステレオ盤のミキシングをしたのだが、これには3日しかかかっていない。それでも、現在みなさんが耳にしているのは、このステレオ盤なわけだ。

それからもうひとつ、当時私たちの側には海外に対する発言権がいっさいなかったために、アメリカではせっかくのレコードにたいへんなことをされてしまったんだ。エコーをかけられたり、時にはアルバムをつぎはぎされたこともあったね。

今となっては直接お伺いできない貴重なお話です。
やはりミックス違いは狙って収録していたという事実や、モノミックスは全員で入念に立ち会い、ステレオミックスはマーティンさん達にお任せで仕上げていたとのことで、当事者ならではの臨場感溢れるお話です。
当時の英国盤モノラルレコードを聴くと、4人の想いや時代の空気感が缶詰のように味わえる気がしますが、その理由が少しだけわかった気がします。

マーティンさんの息子さんジャイルズさんのお仕事も素晴らしく、現在の技術で磨かれたリミックス音源が素晴らしい音質で楽しめるようになったのはありがたい限りです。2023年はぜひRubber Soulのリミックスをお願いします。